バレエ界で活躍を続ける熊川哲也さん。26歳で英国から帰国し、Kバレエカンパニー(現Kバレエ トウキョウ)を設立して以降、現役ダンサーとして舞台に立ちつつ、プロデュース、演出、振付などを手がけ、経営者としても全力疾走してきた。国内での活動を始めて25年が経った今、熊川さんの目に映るものは――(構成:平林理恵 撮影:木村直軌)
古典もオリジナルも《クラシックバレエ》に
ケガから復帰したとはいえ、40ちょっと手前の頃は、ダンサーとして、これまでできていたことが、前と同じ方法ではできなくなっていく時期でもありました。求められる水準をキープできなくなるのでは、ということへの葛藤は大きかった。
闘っている相手は、20代の僕。それは、自分自身の中では納得し解決できる問題だったけれど、ファンは電光石火のようなインパクトのある表現を求めます。そして叶わぬと知ると、落胆する。それを想像してつらい気持ちになってしまう。
そんなときは、偉大なダンサーの先輩方の姿を思い起こしました。ヌレエフだってバリシニコフだって、絶対にこのハードルを通過してきたはずだ。巧みに表現の方法を変えて人々を魅了してきたのだ、と。
では、僕自身は何をどう変えていくのか。僕はダンサーであるだけでなく、芸術監督として振付や演出を行い、バレエを後進に教える役割も担い、経営者でもある。僕の工夫のしどころは、このいろいろな仕事をどんなふうに輝かせていくかにあると思いました。