終末期医療はケースバイケース
東 お金についての話は大事ですね。私は親にまず、「本当に借金はないの?」と聞きました。親が亡くなった後、借金が判明したという話をけっこう聞いていましたので。
島田 遺産に関しては、少額財産のほうが、きょうだいでもめるケースは多いようです。それに今は離婚、再婚が増えているので、相続に関しては複雑化しています。
東 そんなことになるくらいなら、どこかに寄付したほうがよさそう。
酒井 私の場合、親が亡くなった後、「あれ、こんな保険証書が出てきた」とあたふたしたので、財産に関して明文化するのは一番基本的な終活だと思っています。自分に関しても、ちゃんとやっておくつもりです。
東 将来的に介護が必要になったときの方針も大事。酒井さんは結婚していないけれど、パートナーはいらっしゃるんですよね。将来の介護については、何か話していますか?
酒井 今のところはしていません。将来、介護をする覚悟は一応できているつもりなのですが。
東 こればかりは、どちらが先か、いつ始まるかもわからない。うちの夫は年下で、健康だけが取りえみたいな人でした。ところが難病にかかり、47歳から2年間寝たきりになり、今は歩行困難で車いす生活です。私が先にいなくなったらどうするのか。その話をふると、「やめて、考えたくない」と、思考停止するみたいです。
酒井 終末期医療に関することも、終活の必須項目ですよね。私は、延命治療はしてほしくない。
東 その場合はちゃんとその旨を書いて、日付を入れて捺印しておいたほうがよさそうです。本人とご家族、医療の3つがうまく連携しないと、希望通りにはいかないケースもありますから。
父が亡くなる前、手術後に父の眉間に縦ジワが寄っていたので医師に聞いたら、たぶん痛いんでしょう、と。「痛みを取ってください」とお願いしたら、そのためには肝臓に負担がかかる点滴が必要だと言われました。でも肝臓の負担を回避しても、この先そう長く生きられるわけではない。そう食い下がったら、ここは終末医療の場ではないと怒られました。
島田 医療というのは「生かす」ためのもので、「死なす」ことは一種の敗北ですからね。ただ、今みたいに高齢化が進むと、むしろ死なせ方のほうが重要でしょう。
酒井 昔よりは、そういうことに対する理解が深まったようには感じます。緩和ケアをしてくれるホスピスも、増えてきたようですし。