ちゃんと似合うのだろうか。年甲斐もなくやっぱり無理かしら……(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは愛知県の80代の方からのお便り。普段は手に取らないような色のズボンを衝動買い。最近おしゃれに目覚めたのは、あることがきっかけだったそうで――。

おしゃれに目覚める

ショッピングに行った時のこと。何を思ったのか、普段は手に取らないような赤のズボンと緑のズボンを衝動買いした。

帰宅して、ズボンを眺めながら、われに返る。ちゃんと似合うのだろうか。年甲斐もなくやっぱり無理かしら……。どうして買っちゃったんだろう、と後悔さえしかけた。

ともあれ、まずは穿いてみなくてはわからない。勇気を出して赤いズボンに脚を通すと、サイズはぴったり。見た目もかなりいい感じなんじゃない? 自画自賛しながらひとりで大笑いし、せっかくなので外へ繰り出した。自然と歩き方も、若い時みたいに軽やかになる。

私がこんなふうにおしゃれに目覚めたのは、ちょっと前に髪形を変えたのがきっかけかもしれない。白髪が多くなったので、清潔感が一番と、髪をお団子に結んだヘアスタイルにしたのだ。おでこを丸出しにするのには、勇気がいった。

夫の死から7年が過ぎ、世間でいうおひとり様の生活ももう長い。子どもたちが安心して過ごせるように、健康でいたいというのが、これまでの私の最優先事項。だが最近は、健康だけでなく、人生を楽しむのが大事だと思うようになってきた。

この年になって初めて、髪をいじる喜びを知ったし、それに伴う心の変化もまた、よきものと気づいたのだ。


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