
2025年3月9日、大相撲春場所がエディオンアリーナ大阪で開幕。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります。
とんでもない初日
カレンダーをにらみながら、「早くコイコイ」と思い続けた期待の大相撲春場所が、3月9日にエディオンアリーナ大阪で始まった。以前から「荒れる春場所」と言われているが、最近はどの場所も荒れるから、その点では不動心でいたが、とんでもない初日だった。
第74代横綱となった豊昇龍は、春場所前からニュースで見ると、顔つきも体つきも横綱の風格になってきた。私は業界新聞社の記者をしていた時に、企業のトップの人たちから「役職が人を作る」というのを見てきたので、豊昇龍もそうだ、と素直に思った。
ところが初日の豊昇龍は、小結・阿炎に一気に突き出されて、見せ場なし。阿炎には3連敗である。NHKテレビでは、取組前に豊昇龍のインタビューを放送し、豊昇龍は、「どんな相手でもその相手の苦手な体勢を作るのが僕の型」と話していたが、これでは横綱として「かたなし」である。「大関の時よりも3倍も4倍も忙しい」そうだが、場所前は行事、祝賀の席、インタビューなど、超多忙だったことだろう。
私の両親は、東京の下町の相撲部屋、結婚した力士の住まいが多い地域でそれぞれ育った。そのせいか、出世した力士が次の場所で負けが続くと「贔屓の引き倒しだ」と言っていた。祝賀の席や激励の席への出席はもちろん、何処へ行っても期待の声をかけられ、プレッシャーもあり、心身ともに疲れるというわけだ。「それを乗り越えるのが真の強い力士なのだ」とも言っていた。豊昇龍の今後に期待したい。