「何かの時に集まって、その時に団結して、それぞれの役割を受け持てばいい。家族というより『チーム神津家』のイメージよね」(はづきさん)/右から、神津カンナさん、中村メイコさん、神津はづきさん(撮影:宮崎貢司)
2歳で子役として芸能界に入り、作曲家の神津善行さんと結婚後も、女優として活躍し続けてきた中村メイコさん。仕事でも家庭でも変わらずパワフルなメイコさんのことを、娘のカンナさんとはづきさんは「規格外の母」と言います。神津家の女性3人は、家での役割をそれぞれどのように受け止め、向きあってきたのでしょうか。後編は娘たちが母から学んだことからーー(構成=福永妙子 撮影=宮崎貢司)

〈前編はこちら

「新しい自分」は自分で見つけに行かないと

はづき 私がお母さんから学んだことがあるとしたら――。

メイコ 何? 言ってよ。(笑)

はづき さっきも言ったけど、お母さんは、ものごとに対して文句を言わないでしょう。何か起きても、「何で?」とか「どうして?」とか言わず、事実として全部受け入れる。だから私も子どもたちが小さい時に、「いいとこ取りはできないのよ」と言い聞かせてきたの。友だちにイヤなところがあっても、全部受け入れなきゃ本当の友だちじゃない、とか。

メイコ 人生で起きる悪いことって、出産に似ているのよ。

カンナ 出産?

メイコ 自分が妊娠中で出産間近だと思ってみて。平穏に過ごしていたら、突然痛みが襲ってくるのよ。痛みがどんどん強くなって、「ひえ~」と思うけど、もう後戻りはできない。「ああ、こりゃ産むっきゃないなあ」と覚悟を決めるわけね。悪いこともあったけど、その後にはすごく大きな幸せも得られる――。どう、人生そのものでしょう。

カンナ なるほどねえ。私も人並みに悩むことはあるけど、必ず思うのは、「ああ、これも含めて私が受け入れたものなんだ」ということ。いいところだけ取ることはできないと、お母さんに教わったね。

メイコ 結婚は大変なこともあるけれど、楽しいことだってあるはず。私の父はユーモア小説の作家だったけれど、自分で一銭も稼がない時期がものすごく長かった人なの。それでも母は愚痴ひとつ言わず、機嫌よく暮らしていた。

カンナ 現実に不満があるなら、意識的にお芝居してみるのもいいかもね。はづきが前に言ってたよね、「みんなも、家庭内で女優を目指せばいいのに」って。

はづき 「行ってくるよ」という夫を送り出すのも、「フンッ」じゃなく、甘~い声で「はい、行ってらっしゃい」ってね。ドアを閉めてから、「は~あ、行った、行った」。(笑)

カンナ うまいなあ。今さら夫に「愛している」なんて言えなくても、「自分は女優だ」と思えば言えるのかもしれない。