「新しい自分」は自分で見つけに行かないと
はづき 私がお母さんから学んだことがあるとしたら――。
メイコ 何? 言ってよ。(笑)
はづき さっきも言ったけど、お母さんは、ものごとに対して文句を言わないでしょう。何か起きても、「何で?」とか「どうして?」とか言わず、事実として全部受け入れる。だから私も子どもたちが小さい時に、「いいとこ取りはできないのよ」と言い聞かせてきたの。友だちにイヤなところがあっても、全部受け入れなきゃ本当の友だちじゃない、とか。
メイコ 人生で起きる悪いことって、出産に似ているのよ。
カンナ 出産?
メイコ 自分が妊娠中で出産間近だと思ってみて。平穏に過ごしていたら、突然痛みが襲ってくるのよ。痛みがどんどん強くなって、「ひえ~」と思うけど、もう後戻りはできない。「ああ、こりゃ産むっきゃないなあ」と覚悟を決めるわけね。悪いこともあったけど、その後にはすごく大きな幸せも得られる――。どう、人生そのものでしょう。
カンナ なるほどねえ。私も人並みに悩むことはあるけど、必ず思うのは、「ああ、これも含めて私が受け入れたものなんだ」ということ。いいところだけ取ることはできないと、お母さんに教わったね。
メイコ 結婚は大変なこともあるけれど、楽しいことだってあるはず。私の父はユーモア小説の作家だったけれど、自分で一銭も稼がない時期がものすごく長かった人なの。それでも母は愚痴ひとつ言わず、機嫌よく暮らしていた。
カンナ 現実に不満があるなら、意識的にお芝居してみるのもいいかもね。はづきが前に言ってたよね、「みんなも、家庭内で女優を目指せばいいのに」って。
はづき 「行ってくるよ」という夫を送り出すのも、「フンッ」じゃなく、甘~い声で「はい、行ってらっしゃい」ってね。ドアを閉めてから、「は~あ、行った、行った」。(笑)
カンナ うまいなあ。今さら夫に「愛している」なんて言えなくても、「自分は女優だ」と思えば言えるのかもしれない。