「老いは財産や」と語る綾戸智恵さん。母親を介護した日々では、精神的に追いつめられたこともあったと言います。老いていく母に学んだ、綾戸さんの生きるうえでの指針とは(構成:丸山あかね 撮影:洞澤佐智子)
ガラガラ声こそ私の特徴になった
綾戸さんはいつも元気いっぱいですね、と言われるんですけど、そんなことありませんよ。若い頃とは違うからペースを整え、67歳なりにやってます。コンサート活動のほか、2022年はアルバムも発表しました。
私は音楽が好きで、それを支えてくれてるのはお客さんだと感謝してます。好きなことを仕事にできるのは幸せなことですし、音楽に出合わせてくれた母には感謝しかありません。
父が早くに亡くなってから、母は私のことを第一に考えて大切に育ててくれました。そんな母が私を通わせる先に選んだのが、カトリック系の幼稚園。英語や芸術の授業があった影響で、私はその頃にクラシックピアノを始め、小学校に上がるとテレビや映画で見たシーンを真似して歌うようになったんです。
人生って、わからんもんやなと思います。音楽の授業で先生から、「ガラガラ声やから休んどいて」と言われてた私が歌手になるんですから。
「自分はガラガラ声なんや」と受け止めるだけで卑屈にならなかったのは、母が「欠点も年を重ねると自分の特徴になる」と言ってくれたから。