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インターネット上の誹謗中傷について、プラットフォーム事業者に迅速な対応を義務付ける「情報流通プラットフォーム対処法」が4月1日に施行されました。脳科学者の中野信子先生は言語とはその性質上、人間の行動パターンを大きく変えてしまうことがあることを指摘し、「人間の歴史はまじないの歴史」と語ります。「言葉の隠された力」を脳科学で解き明かします。そこで今回は、中野さんの著書『咒の脳科学』から、一部引用、再編集してお届けします。

不都合な事実が明るみに出たとき

ウソをつくことは美しいか、美しくないか、と問われれば、基本的には美しくないことである、と答える人が大半ではないだろうか。

もちろん、誰かを守るためのウソや、みんなにとって大切なプロジェクトを軌道に乗せるために方便として用いるウソなど、ウソにはさまざまな形態と用途があり、一概に言えるものではないということも理解しておく必要がある。

また、不都合な事実が明るみに出たとき、それを隠匿しようとする人よりは、素直に認めて謝る人に対してのほうが、人々は寛容であるように見える。

一方で、隠匿しようとする人――「この人はウソをつく人だ」という印象を一度でも与えてしまった人については、その行為がいつまでも人々の記憶に残ってしまう。何年経っても、そのこと自体が攻撃の口火となり、積極的にウソをつくわけでなくとも、この人は「不都合な真実をなかったことにしてしまう人だ」と失望と落胆の気持ちを強めたり、支持する気持ちを萎えさせたりしてしまう。