どこでもタバコを吸えた時代があった(写真提供:Photo AC)

文明が進み私たちの暮らしは便利になっているはずなのに、なぜか昔に比べて生きにくくなってきていませんか?ロングセラー『定年後のリアル』シリーズの著者・勢古浩爾さんが綴る「なんの変哲もない日々」は、地味だけどなんだか自由――。「あの頃はよかった」と徹底的に懐かしむエッセイ『77歳、喜寿のリアル:やっぱり昔は良かった!?』より一部を抜粋して紹介します。

もちろん、現在のほうがいい部分もたくさんある

昔がいいことばかりだった、ということはありえない。「やっぱり昔はよかった」とは、芸術文化という場合の文化(通俗的には娯楽文化)に関して、いえることである。

もしくは、素朴な人間関係の記憶や、失われた郷愁として……。社会的関係(上下関係、男女関係など)や物の進歩については、断然、現在のほうがいいといわざるをえない。

現在がいいのは、人間関係が昔よりも寛容になったことだろう。パワハラやセクハラ意識が広まったことで、年齢差別、男女差別が昔よりは減った。

ばかなオヤジ社員たちだけが待ち望んでいる社員旅行や、居心地の悪い「飲み会」が減ったことはいいことだ。

公共マナーもよくなった。公共の場での喫煙は激減した。日本のGDPはドイツに抜かれて世界4位になったらしい。今年にはインドに抜かれ5位になるといわれている。

このことをいかにも一大事のように新聞やテレビは報じるが、いまさら騒ぐこともない。とっくの昔に日本は政治的・経済的には二流国になっているのだ。

GDPごときが4位になろうと、5位に落ちようと、われわれの知ったことではない(実際、知ったことではない)。