(写真提供:Photo AC)
現在放送中の、25年春のNHK連続テレビ小説『あんぱん』。モデルとなったのは、長年子どもたちに愛されるキャラクター「アンパンマン」の作者・やなせたかしさんと、妻の暢さん夫妻です。今回は、そんなやなせ夫妻に秘書として20年寄り添い、現在は株式会社やなせスタジオ代表取締役を務める越尾正子さんの著書『やなせたかし先生のしっぽ: やなせ夫妻のとっておき話』から、一部を抜粋してお届けします。

アンパンマン

「自分らしい作品は何かと追い求めてきたが、最後にアンパンマンに出会えて、本当に良かった。そして、いつの間にか、『やなせ流』ができてしまった」

「やなせ流」と先生は時々口にしたが、それがどういうことかは、語ってくれなかった。聞いてもきっと答えてくれないと、私は思っていた。なぜなら、それこそがやなせ先生の人生そのものだから。それでも、

「きっとひと言では言えないのではないだろうか――」

そう思って、聞きたくても聞き出せずにいた。