『新・心とからだの養生学 』
イラスト:小林マキ

厚生労働省によると、現在、国内の認知症患者は約700万人と見込まれています。つまり、65歳以上の5人に1人の割合というのですから、他人事ではありません。いつまでも脳の健康を保つにはどうしたらよいでしょうか(イラスト/小林マキ 取材・文・構成/岩田正恵《インパクト》 デザイン/米山和子《プッシュ》)

その“もの忘れ”、
加齢のせい? それとも――

多くの人が認知症を意識するのは、もの忘れが増えたときではないでしょうか。

「歳を重ねてからのもの忘れの原因には、加齢によるものと認知症の二つがあります。判断基準はシンプルで、体験の一部を忘れているなら加齢、体験そのものを忘れていれば認知症の可能性が高い。例えば、朝ご飯に何を食べたかを忘れるのは加齢ですが、認知症の場合は食べたこと自体を忘れてしまいます。また、間違いを指摘されて、『あ、そうだった』と思い出せれば加齢、思い出せなければ、危険信号です」と解説するのは、院長を務めるクリニックで物忘れや認知症の診療をしている脳神経外科医の伊藤たえ先生です。

認知症の兆しは、食生活にも表れます。

「料理は事前にメニューを考えたり、複数の食材を同時に扱ったりといった複雑な作業を伴います。認知症によってそれが難しくなると、まず品数が減少。味つけが変わった場合は、調味料の入れ過ぎや入れ忘れの可能性大です」(伊藤先生。以下同)