「さまざまな人格が混在している、というと大袈裟ですが、いろんなキャラクターが自分の中に存在するのは確かです」(撮影:小林ばく)
こういう映画を創ろうとしている人たちがいる限り、日本映画も捨てたもんじゃない――熱い思いを淡々と吐露するのは、俳優のオダギリジョーさんだ。役者という枠を超えて活躍を続ける、その原点とは(構成:篠藤ゆり 撮影:小林ばく)

カオスを味方につけ作品に活かしたい

ここ10年ほど、役者に加え、映画やドラマの監督、脚本、プロデューサーなど、さまざまな形で映像を《創る》側の仕事も増えてきました。

そうなって改めて気づいたんですが、自分が創る作品にはたびたび、桜が登場するんです。生まれ育った岡山県の津山は城下町で、春は津山城跡が桜で覆われ、名所になっている。もしかしたら原風景として、意識下に刻まれているのかもしれません。

脚本を書く時に役立っているのがメモなんです。たとえば、「こういう状況でこんな反応する?」とか、「こういう時にこんな言葉を言われるとムカつく」など、自分からすると変だったり、驚き、怒り、可笑しさみたいなこと、気になったり思いついたりしたことは、なるべくメモします。

以前は手帳に書いていましたが、最近はスマホのメモ機能を利用していますね。読み返すとけっこう面白いことが書いてあったりするので、それを台詞に使ったりすることも多いんです。

実は一時期、夢日記をつけていたことも。ただ、夢なのか現実なのか、その境目がわからないような夢が多くなり、脳と自分の騙し合いのようなことが増え、このまま続けると精神を病んでしまうのではないかと思ってやめました。

自分の性格は……カオスでしょうか(苦笑)。さまざまな人格が混在している、というと大袈裟ですが、いろんなキャラクターが自分の中に存在するのは確かです。

だから、『ある船頭の話』みたいな明治時代を舞台にした静かな映画も創れば、『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』みたいな型破りなコメディドラマも創ったりするんでしょうね。そんな自分を、客観的に興味深く見ています。

でもまぁ、人間誰しも、いろいろな側面を持っているものですよね。それがうまくモノづくりに活かせるといいなと思っています。