阿部サダヲ(55)と松たか子(48)が共演するテレビ朝日系『しあわせな結婚』(木曜午後9時~)は希少なドラマ。ミステリーとコメディ、ホームドラマが融合している。
ミステリーはドラマの一部分というわけだが、添え物的なものでは決してない。殺人事件の謎解きが存分に堪能できる。
事件が起きたのは15年前。画家の布勢夕人(玉置玲央)が殺された。女子高の美術教師・鈴木ネルラ(松)の当時の婚約者である。
現場は布勢のアトリエだった。ネルラの父親で元缶詰メーカー社長の鈴木寛(段田安則)が布勢に貸していた部屋だ。
事件当時、現場にいたのは布勢とネルラ。だから、ネルラが疑われたが、本人は「やってない」と否認。階段の2階から踊り場への転落事故ということで決着する。
ところが、警視庁の刑事・黒川竜司(杉野遥亮)が殺人であると強く主張したため、再捜査が始まった。転落死ではあり得ない傷が死体の頭部にはあった。黒田がまず疑ったのはやはりネルラだ。
タレントとしても活躍する敏腕弁護士・原田幸太郎(阿部)は、ネルラの過去をつゆも知らず、彼女と結婚する。2人は病院のエレベーター内で出会うと、たちまち惹かれ合い、結ばれた。
ネルラの抱える事情を知った原田は結婚を後悔する。黒川から「なぜ、奥さんはそのこと(事件のこと)を言わなかったんですかね」と皮肉っぽく言われ、落ち込む。
それでも原田はネルラを守ることを決意する。惚れた弱みだ。そう突飛なことではないはず。配偶者のことは無条件で庇うという人が多いのではないか。
このドラマにおいて阿部と松の役割の重さや露出度は同程度だが、ダブル主演ではない。阿部が主演で松は相手役である。ネルラという特異な女性と結ばれた男性が翻弄される様子がストーリーの軸になっているからだろう。