(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
各地でクマによる人身被害が後を絶ちません。しかし実際のところ、クマはどのようにして人を襲うのでしょうか? 今回は編集プロダクション・風来堂の著書『ドキュメント クマから逃げのびた人々』から一部を抜粋し、実際にクマに襲われた当事者の生の声をご紹介します。

山の幸を採取販売する「原生林の熊工房」

日本は周囲を海に囲まれた島国でありながら、地形的には山間部も多く、北海道をはじめとして全国各地にクマが生息する。

クマと人が接触することによる事故も度々発生しているが、中でも顕著なのが東北地方だ。2024(令和6)年度のクマ類による人身被害の発生状況を見ると、東北地方の中でも秋田県が9件ともっとも多く、次いで岩手県が8件と続く(環境省「令和6年度クマ類の出没状況等について」より)。

岩手県岩泉町に住む佐藤誠志(当時57歳)さんも、そんなクマ被害に遭遇した一人。佐藤さんは「原生林の熊工房」という名のネットショップを経営している。扱っているのはペット用品の他に、キノコや山菜など、ご当地の美味しい食材だ。

毎日午前3時に起きると山に向かい、熟知したポイントを回って山菜類を採取する。山を下りた午後は採ってきた食材の加工や商品の梱包作業をし、夜は自身が運営するYouTubeチャンネルのための動画編集やSNSでの情報発信に時間を費やす。