日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが展開していく中、江戸時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「尊号一件」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし!
治済・定信の間にピリついた空気が
今回の『べらぼう』では、一橋治済が老中・松平定信に対し「太上天皇の尊号の一件は不承知と返答したそうじゃのう」と尋ねるシーンが描かれました。
これは、光格天皇がその父への「太上天皇」尊号宣下を希望するも、定信が却下した、という史実に基づくもの。
治済が断ったワケを直接問うと、二人の間にピリついた空気が流れるなど、今後の展開に大きくかかわってきそうな場面でしたが…。
今回はこの件について解説したいと思います。