順調すぎて、このままだとトマト長者になってしまうかもしれない…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは神奈川県の60代の方からのお便り。母親からもらったトマトの種が、すくすくと順調に育っているのを見て思いを巡らせたのは――。

農業の大変さと楽しさ

母が突然トマトの種を買った。苗ではなく種だ。種から育てたことなんかないのに、なんで?

実家の畑に蒔いた残りを持たされたので、夫に頼んで、わが家の小さな畑にも蒔いてもらった。一体どうなるのか不安だったが、まずまず順調だ。

現在、わが家の苗は4本、すくすく育っている。順調すぎて、このままだとトマト長者になってしまうかもしれない。食べ切ることができるだろうか。まあ、冷凍しても、近所におすそ分けしてもいい。何とかなるだろう。

それにしても野菜を育てるって、思いどおりにはならないものだ。昨年の12月初旬、毎年育てているキヌサヤの種を蒔いたが、ちっとも芽が出てこない。あるだけ全部蒔いたので、これは大豊作だ、とほくそえんでいたのに。何とかよろよろと芽が出て、ホッと胸をなで下ろしていたら、今度は何かに食べられてしまった跡が。鳥? それでもキヌサヤは驚異的な頑張りを見せ、再度よろよろと成長し、それなりの収穫はできた。

思うとおりに育たなかった原因を考える。種が昨年の残りだったからだろうか。でも、今まで2年前にできた種だって、今まではちゃんと育っていたし。となると、土づくりか。石灰も撒かず、肥料も相当古いものを使っていた。これか。反省を活かして植えたシシトウは、今のところ順調に育っている。

わが家のような家庭菜園に毛が生えた程度でも、雑草をむしって、耕して、適量の肥料をやり、支柱を立ててと、やることは尽きない。体力ばかりでなく頭脳も、胆力だって必要になる。

今年の猛暑で全国的に不調となっている米づくりともなれば、その大変さは計り知れない。重く足をとられる田んぼの中での作業は過酷だ。実家にも(大変小規模ながら)田んぼがあるが、もう10年以上、休耕田のまま。父は大変さゆえに腰を痛め、米をつくるのを断念したのだ。

この田んぼにもう一度銀シャリを実らせるには、膨大なエネルギーが必要になる。私には草を刈るくらいしかできないだろう。どうにもならないことが悲しい。

と考えたが、草刈りは嫌いじゃないと思い直す。運動でもするつもりで作業に精を出してみるか。まずは手始めに、実家の畑にトマトを植えてこよう。来年にはたくさんの赤い実の中で、嬉しい悲鳴を上げていられますように。


※婦人公論では「読者のひろば」への投稿を随時募集しています。
投稿はこちら

※WEBオリジナル投稿欄「せきららカフェ」がスタート!各テーマで投稿募集中です
投稿はこちら

【関連記事】
台湾旅行のツアーで出会った、91歳の背筋がすっと伸びた女性。2人の孫と4人のひ孫がいると話す彼女の、年に2度の楽しみは…
リサイクルショップで500円で買った、クマの絵が付いた緑色のTシャツ。気に入って着ていたら、病院の先生から衝撃の事実を告げられて
82歳で有料老人ホームに入居してきたA子さん「姥捨山どころか、ここは老人天国。第二の青春。いや、老春!」と施設を満喫していたけれど…