「彼の脚本のことは僕がいちばんわかっているだろうと、監督も冗談で、〈皆さん、岡部さんをお手本にお芝居してください〉なんておっしゃっています(笑)」(撮影:小林ばく)
50歳のとき、テレビ局のハラスメント上司という強烈なキャラクターを演じたことがきっかけで、ブレイクを果たした岡部たかしさん。クセのある人物や気弱な役を巧みに演じ分ける実力派は、今期の朝ドラ『ばけばけ』で、2度目の父親役に挑んでいる。ヒロイン・トキと、父・司之介(つかさのすけ)の関係性は、自身と息子との間柄とも重なる部分があるそうで――(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)

「人生に二度とない」と父親役を演じることに

『ばけばけ』のお話をいただいたとき、最初は、「ありがたいけど、やってええんかな」という気持ちになったんです。ヒロインのお父さん役で出演するのは、昨年の『虎に翼』に続いて2度目。でも、「やりたい」と思いました。というのも、実は脚本を担当するふじきみつ彦君が、一緒に演劇を作ってきた15年来の仲間だったから。

それで、まず彼が朝ドラに決まったことに大喜びして、仲間が20人くらい集まって祝賀会を開いたんですよ。僕たち俳優は、「俺らも出してよ」なんて品のないことは言わず(笑)、ただ「おめでとう」と祝福。

だからその後、父親役でとお話をいただいたとき、一瞬どうしようとは思ったものの、昔からの仲間が朝ドラの脚本を書いてそれに出演できるなんて、人生に二度とないと思ったので、「ぜひやらせてください」という流れになりました。

ただ、聞くところによると、ふじき君はキャスティングには関わっていなかったそうなんです。品がある話ですよね。(笑)

僕がやっている演劇ユニット「切実」では、ずっとふじき君の脚本を演じてきました。だから彼の脚本のことは僕がいちばんわかっているだろうと、監督も冗談で、「皆さん、岡部さんをお手本にお芝居してください」なんておっしゃっています(笑)。とんでもないことなんですが。

ただ、率先して楽しく演じさせてもらってはいて。こんなことをしたらもっと楽しい芝居になるかなと、ときにはわざと監督に怒られるような演技もやってみたり、いろいろなことを試しています。

ただし、ふじき君の脚本は狙って笑いを取りにいくと面白くなくなるので、そのさじ加減は必要。やりすぎていないかと心配もしましたが、ふじき君本人に聞いてみたら、いい感じだと言ってくれたので安心しました。