(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計(確定数)の概況」によると、令和6年は合計で160万5378人が亡くなり、前年から2万9362人増加したそうです。「多死社会」といわれる日本で、人はどのように死を迎え、その過程では何が起こっているのでしょうか。今回は、検視官として3年間で約1600体の遺体と対面した、立教大学社会デザイン研究所研究員・山形真紀さんの著書『検視官の現場-遺体が語る多死社会・日本のリアル』から一部を抜粋し、現代社会が抱える課題に迫ります。

検視に対する家族の反応

人の死に場所として多いのはベッドの上ですが、トイレ付近ということも珍しくありません。死が近づいてくるとどの人も食欲がなくなり失禁脱糞が増える傾向があるようです。

トイレ付近で便まみれで亡くなっていても、恥ずかしいことではありません。変に家族が気を回して片付けてから110番通報したことにより、死体所見(遺体の外表を調査した結果)と現場の状況に矛盾が生じたりするほうが、よほど問題なのです。

例えば、家族が床上で倒れている死者を発見したとき、病気の悪化で口から血液様のものを吐いていたとします。警察が現場に臨場した際、死者は衣類を整えられて綺麗な布団に寝かされているのに、現場の床面に真新しい血痕がところどころ残され、遺体の口腔内や顔面などに血液様のものを拭った跡が確認できたとしたら明らかに不自然で矛盾があり、疑うのが仕事の警察には証拠隠滅じみて見えるわけです。

死者への思いやりで悪意がない行為だとしても、それを明らかにするほうが大変なので、現場はそのままの状態で通報するか、救命時の状況等があるなら、できる限り正確に説明してください。