イラスト:遠藤舞
ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。今回は「誰のため?」。ニューヨーク市長選やニュージャージー州知事選に注目していたというスーさん。細かく見ていくと、市民のためでも言論の自由のためでもなく、大資本が拡張するために政治が利用されていると感じて――。

振り子が揺れるように

11月4日に行われたニューヨーク市長選挙で、民主党候補の州議会議員であるゾーラン・マムダニが当選した。彼はウガンダ生まれのインド系アメリカ人で、7歳の時にアメリカに移住したイスラム教徒の移民である。

前号では、トランプ支持者の保守論客チャーリー・カークが暗殺された事件を扱った深夜トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』が、放送局であるABCから無期限の放送停止を言い渡された件を書いた。これは政府の批判を受けての判断であり、言論の自由を脅かすものだと全米で大論争が起こり、結果的には6日後に放送が再開された。

左派のマムダニを当選に導いたきっかけのひとつに、この放送停止事件があったと私は考えている。ジミー・キンメルに対して酷い発言ばかりだったトランプ大統領はその後も言いたい放題で、マムダニのことを「狂った共産主義者」と呼び、ニューヨーク市への補助金停止を示唆するほどだった。

結果的にニューヨーク市民はマムダニを選んだわけだが、私の女友達は、この結果に一抹の不安を覚えていた。おそらくマムダニがイスラム教徒であることやイスラエルに批判的なことを理由に、共和党が民衆の不安を煽るだろうと読んでのこと。マムダニがどんな施策を実施するかが来年の中間選挙に大きく影響するだろうとも言っていた。

マムダニは映画監督の母とコロンビア大学の教授を父に持つエリートだが、あえてポピュリズム的な左派路線を打ち出している。右派にしろ左派にしろ、わかりやすさが数字に繋がるご時世なのだ。結果、振り子が揺れるように「既存の真逆」が選ばれる事態が続く。