ライター・しろぼしマーサさんは、企業向けの業界新聞社で記者として38年間勤務しながら家族の看護・介護を務めてきました。その辛い時期、心の支えになったのが大相撲観戦だったと言います。家族を見送った今、70代一人暮らしの日々を綴ります。
認知症の母が文房具のハサミで髪を切り出した
今から10年前、残業を終えて家に帰ると、食卓のテーブルに向かい、認知症の母が文房具のハサミで自分の髪を切っていた。「私が切るから、やめて!」と、私は大声を出して止めた。私は素人なので、美しい髪型にできるわけがなく、母の髪をただ短くした。
母は私以上のものすごいクセ毛で、1カ月以上美容室に行かないと、髪が横や縦に広がり、何事が起きたのかという髪型になった。母は、ショートカットだった髪が伸びたので、気になってしかたなかったのだろう。
しかし、母は美容室に行く気はなかった。私が強引に連れて行っても、じっとしていられず、美容師さんやお客さんに迷惑をかけることが予想できた。
母は介護認定を受けていたので、ケアマネジャーさんに聞くと、「訪問してくれる美容師さんが辞めてしまい、探している」と言われた。
