最後まで美容師でいた。そして、これからも…
今年の秋が終わる頃、美容室に予約の電話をした。Tさんのお兄さんが電話にでて、Tさんが亡くなったと言った。以前に入院したことは知っていたが、快復したと思っていた。
昨年、医師に癌(がん)で余命を告げられていたそうだ。Tさんは、それを悟られることなく店に立ち、お客さんの髪を綺麗にしていたのである。
私はTさんからもらったハサミを母の遺影の前に置き、涙が止まらなかった。40年間、私のクセ毛と闘ってくれたことへの感謝とともに、Tさんにお願いをした。
「天国で私と顔が似たクセ毛のおばあさんを見かけたら、その人は私の母ですから、どうかプロの手で美しい髪型にしてください。母はお金を持っていないので、お礼は母の笑顔でよいですか?」と…。
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