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日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物“蔦重”こと蔦屋重三郎の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合、日曜午後8時ほか)。ストーリーが展開していく中、江戸時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まりました。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「べらぼう」について。この連載を読めばドラマ本編がさらに楽しくなること間違いなし!

最終回を迎えた『べらぼう』

『べらぼう』、終わりですね。さて、何を書きましょうか。

そもそも、この「べらぼう」、どこから来た言葉なのでしょうか。

落語を聞いていると、江戸っ子が「あたぼうよ!」という。そりゃあどういう意味かと尋ねられると、おれたち江戸っ子は気が短い。だから、「当たり前だい、べらぼうめ」なんて悠長に言ってはいられない。縮めて「あたぼうよ!」と言うのだ、と説明する。

じゃあ、その「べらぼう」は何なのだよ、というわけですね。

「べらぼう」は「甚だしい、並外れている」ことを形容する語として使われます。

「そいつぁ、べらぼうだ」といった場合には、とんでもなく悪い、にもなるし、とんでもなく良いにもなる。現代だと「やばい」でしょうか。この事件やばいな、は、とんでもなく醜悪な事件だ、との意味ですね。悪いのです。一方で、大谷くんやばいね、は、とんでもなくすぐれている。良いのです。