蔦屋重三郎という人物を評すと…

これに対して重三郎はどうか。

才能を発掘して、ヒット作を連発して、権力に抗して負けなかった。だから「江戸のメディア王」でいいのかな? うーん、でもストンとは落ちないなあ。

時代の変転に対して、彼は受動的ですよね。彼が能動的に時代を動かしたわけじゃない。結局ぼくは最後まで、蔦屋重三郎という人を評する的確な言葉に窮していました。なんというか、正体が分からない。

これは彼が基本的に市井の人であり、公人ではないから、しかたがないことかもしれません。

でも彼は、ぼくたち庶民の代表なのです。彼のような人こそが、時代の変転の根幹を担っているのです。