「「ブルゾンちえみ」というペルソナをつけて、自分とはまったく違う性格を演じることは本当に楽しかった。それによって自分自身を解放できて、何度も救われてきたのも事実です。でも、仮面をつけて自分を偽り続けるのはもう限界でした」(撮影:本社写真部)
現在発売中の『婦人公論』5月26日号で表紙に登場したのは、3月31日をもって所属事務所をやめ、お茶の間に知られた芸名も手放した元「ブルゾンちえみ」こと藤原しおりさん。フリーになりたての4月1日、藤原さんにインタビューを敢行。「35億」ネタでの大ブレイクから3年、なぜこの道を選んだのでしょうか(構成=大西展子 撮影=本社写真部)

自信に満ち溢れ、私は無敵だと思える

2020年3月31日をもって、5年間お世話になった事務所を退社しました。これからは芸名「ブルゾンちえみ」ではなく、本名の藤原史織(藤原しおり)で活動していきます。

いまの気持ちを表すとしたら、「すがすがしい」の一言。実はこれ、子どもの頃から大切にしてきた言葉です。いつも自分に、「いま、私はすがすがしく生きている?」と問いかけてきました。

自信に満ち溢れ、世界中のみんなのことが大好き! みたいな最強の心境の時ってあるじゃないですか(笑)。どんなに批判されても、私は無敵だと思える。それが私にとっての「すがすがしい」であり、理想なんです。

世界中が未知のウイルスの脅威を前に大変な状況に陥っています。私に何ができるかわからないけれど、自分にできることをぼちぼち探しながら頑張っていきたいです。

 

妥協して生きていく大人にはなりたくなかった

本日、2020年4月1日からは、藤原しおりとして活動することになりました。昨日の夜は嬉しくて、わくわくして、すっごく幸せな気持ちで眠りました。(笑)

正直、今まで藤原史織という本名が少し照れくさかったんですが、8月で30歳という節目を迎えますし、これからは藤原史織らしく生きていけそうな気がしています。

もちろん、「ブルゾンちえみ」という名前は大好きだし、メチャメチャお気に入りで、私のアイデンティティの一つです。芸人としてデビューして3年間、右も左もわからなかった私に大きな活躍の場を与えてくれて、本当にたくさんの経験をさせてもらったことに心から感謝しています。でも今は、その名前から離れることが、私にとって一番重要だったのです。

「ブルゾンちえみ」というキャラクターは、上から目線でバシッと自分の考えを表現するけれど、本当の私の性格は、実は正反対。周りの空気を読みながら、マイルドに本音を伝えようとするタイプです。だからこそ、「ブルゾンちえみ」というペルソナをつけて、自分とはまったく違う性格を演じることは本当に楽しかった。それによって自分自身を解放できて、何度も救われてきたのも事実です。でも、仮面をつけて自分を偽り続けるのはもう限界でした。

テレビのバラエティ番組では、端的で面白くてキレのいい発言が求められます。何か聞かれたら、間髪入れずに答えるのがテレビでの正解。しかも求められるのは、あくまでブルゾンちえみとしての発言です。自分自身の言葉でしっかり語りたくても、バラエティ番組のひな壇に並んでいる限り、それは求められない。

自分が視聴者としてテレビを見ていた時に、「このタレントの言葉、嘘くさいなあ」ってシラケていたにもかかわらず、今の自分は視聴者に嘘をついているんじゃないか。そんな葛藤がすごくありました。