内閣府が公開した「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年10月1日時点での65歳以上人口は3624万人で、総人口に占める割合は29.3%だったそうです。超高齢社会といわれるなか、高齢者医療の現場に長年携わる精神科医・和田秀樹先生は「現実は『高齢者に優しい社会』とは程遠い。社会全体で尊ぶどころか、『高齢者ぎらい』の空気を醸成しているのが現状」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新著『「高齢者ぎらい」という病』より一部を抜粋してお届けします。
高齢者差別が「当たり前のこと」になっている異常事態
自分自身の権利が制限されることに対して強い異議を唱える文化が育っていないことは、結果として「他人の権利を奪うこと」に鈍感な社会を生み出します。
そしてこのような社会的な鈍感さが顕著に表れているのが、まさに高齢者への扱いです。
高齢者の自由や権利を簡単に制限することや高齢者を軽視するような発言や態度がメディアや日常生活で公然と口にされることを「差別」として認識しようとする人はほとんどおらず、「年を取っているんだから仕方ない」という空気の中、それらがあっさりと正当化されているのです。
たとえば、求人票に年齢制限を明記することは、2007年の雇用対策法改正によってようやく「原則として禁止」とされましたが、いまだに年齢差別が公然と行われているのは周知の事実です。表向きは法改正によって是正されたように見えても、社会の意識や慣行がまったく追いついておらず、面接の場でも「もう少し若い人を探している」といった発言が平然と交わされていたりします。
本来、採用の判断基準になるべきは、応募者の能力や適性です。にもかかわらず、年齢だけで可能性を狭められる人が多く存在しているのが現実です。