
正面玄関横に設置された「雀の巣」のモニュメントが多くの来店客から愛されている、福来屋日本橋本店。親しみやすいデパートで、食品から衣服、日用品、貴金属など様々なものを扱っている。この福来屋に今日もまた、何かを買い求めるお客さんが足を運び――。
デパートを舞台にした、彩瀬まるさんのWEB連載小説、お楽しみください。
【お義母さんが、珍しくはしゃいでいるな、とか、普段よりも楽しそうだな、とか、そういう風に感じたときって、これまでにあった?】
メッセージを作成し、夫の祐司に送信する。しばらく返事を待とうとスマホの画面から顔を上げてふと、舞子は屋上庭園の概要や年間のイベントスケジュールが掲示された案内板に気を引かれた。
この福来屋日本橋店の屋上には、かつて子供向けの動物園があったらしい。ひよこ、うさぎ、アヒルやポニーなどとの触れ合いを中心とした空間で、家族連れで大いに賑わっていたそうだ。
しかし時代の流れに伴う客層の変化から、二十年前にこども動物園は閉園し、動物たちは近隣の動物園に引き取られた。現在、屋上庭園はイベントスペースとして、年明けには餅つき大会、春にはフリーマーケット、夏にはビアガーデンなどが催されている。
百貨店の屋上に、動物園。ずいぶん突飛な組み合わせのようにも感じるけれど、舞子は妙に記憶が揺さぶられるのを感じ、首を傾げた。
百貨店、あるいはデパートの屋上を目指して、わくわくしながらエスカレーターに乗った記憶がある。目の前には、大人の背中やお尻があった。母親や祖父母と手をつないでいた。レストラン街でお子様ランチを食べる間も、そわそわしていた。早く、あそこに行きたい――。
スマホが振動した。祐司からのメッセージが届き、舞子は我に返った。
