植物の香りが持つ力は、実に多種多様。なかでも近年注目されているのが、脳の機能を高めたり、認知症を予防・改善したりする働きです。高齢者施設なども取り入れ始めている、香りを使ったケアを紹介します。(構成:篠藤ゆり)
人は大昔から香りの効果を知っていた
私が脳と香りの関係を研究し始めたのは、20年ほど前のこと。天然の植物の香りを嗅ぐことによってリラックスしたり、逆にやる気が出たりといった不思議な効果に強く興味を持ったことがきっかけでした。
とはいえ、人が香りを活用してきた歴史は古く、古代から呪術的な儀式に取り入れられたり、マリー・アントワネットもバラのアロマバスを楽しむなどしていたようです。
10世紀には植物から香り成分(精油)を抽出することに成功し、14~15世紀頃のヨーロッパではすでに、植物の香りが持つさまざまな効果を認識していました。
その証拠に、17世紀にフランスで感染症のペストが流行った際、抗菌作用のある植物の精油を鼻につけたり、ハーブビネガーを体に塗ったりしていた人は感染を免れたという記録が残っています。
皆さんも一度は耳にしたことがあるかと思いますが、「アロマテラピー」とは、植物の精油を心身の健康回復を促すために取り入れる療法のこと。日本では、アロママッサージなどリラクゼーションのひとつだと思っている人が多いですが、フランスやベルギーでは医療行為として認められているのです。
現代ではさらに研究が進み、植物のどの香りが、人間の心や体にどんな影響を及ぼすのかが次々と科学的に解明されてきています。
香りの効果は、自律神経、ホルモンや免疫系、感情・情動行動の調整のほか、鎮痛、抗菌、抗炎症、食欲調整の作用に抗がん作用など多岐にわたります。なかでも昨今注目されているのが、脳の機能を高めたり、認知症を予防・改善したりする働きです。