(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
少しずつあたたかくなり、春の気配が感じられる季節になってきました。ラッパーや俳優など多方面で活躍しながらも園芸家の顔を持ついとうせいこうさんは、長年続けてきたベランダ園芸家(ベランダー)から室内園芸家(ルーマー)にシフトしつつあるそうです。そこで今回は、いとうさんが東京新聞で連載してきた人気コラムを書籍化した『日日是植物』から、2019年5月のエッセイを紹介します。

室内園芸家ルーマー宣言

ベランダ園芸歴25年、ベランダエッセイ歴も同様の長さを持つ俺です。かつてはガーデナーに対抗してベランダーと名乗っておりました。なにしろ土地が狭い日本ですから、そうそう庭など持てるわけではないのです。したがって俺はガーデナーにむやみな敵愾心(てきがいしん)を燃やしていたわけなのですが、それももはやくだらぬこと。

今の俺は昨年から植物より自分を優先して賃貸物件を選んでみており、そのせいでベランダ園芸さえ十二分には行えぬ状況の中(もちろん慎ましい工夫を駆使して、小さなベランダにも植物はいくつか置いておりますが)、ついに室内園芸に血道をあげる「ルーマー」に変身したのであります。

ルーマー。思えばガーデナーからずいぶん遠くまで来たもので、エアコンか何かの名前みたいな呼称になっておりますし、ベランダーまでなら意味も多少は伝わったものですが、いやはやルーマーでは何が何やら。

けれどもその意味不明なルーマーたる俺は、多少の採光があると気づけば玄関にもサッシ窓の内側にも鉢を置き、そこがじめじめしていれば押し入れに置く湿気取りを設置し、収納棚を単に植物を高いところに置くために買い、「日日是植物(にちにちこれしょくぶつ)」と過ごしている。

でもって、何かに熱中し始めるとすぐにそれを書き残したくなる強欲な自分は、こうしてみなさまの目の前にしゃしゃり出て、あれやこれやと植物の話をしようと考えた次第。