ドラマ『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』などを手掛けた脚本家のふじきみつ彦さん。放送中の連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)では、明治時代を舞台に、松江の没落士族・小泉セツをモデルにした物語を紡ぐ。セツの夫は、怪奇文学作品集『怪談』で知られる小泉八雲。松野トキ役を高石あかりさん(高ははしごだか)、夫で小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)をモデルにしたレフカダ・ヘブン役をトミー・バストウさんが演じている。明治初期の松江から始まった物語は、3月16日放送の116回から、舞台を東京に移す。クライマックスを前に、ふじきさんに作品への思いを聞いた。(取材・文:婦人公論.jp編集部)
高石とトミーの演技にリアリティ
<ふじきさんは、広告代理店勤務を経て、コントや小劇場の世界へ。『ばけばけ』に司之介役で出演する岡部たかしさんとは、演劇ユニット「切実」を組むなど、ユニークなキャリアの持ち主だ。連続ドラマを1人ですべて書いたのは1回2分30秒の『きょうの猫村さん』(2020年)と1回30分の『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』(全7回、2021年)だけ。制作側からは「朝ドラっぽくないものを書いてほしい」というオファーだったという>
母親が松江の出身で、僕自身、小泉八雲は知ってはいたけれど身近ではありませんでした。朝ドラを書くことになった時、小泉セツさん以外にも候補があって。最終的にセツさんに決めた理由のひとつが「ヘルンさん言葉」です。
セツさんは、ハーンさんの日本語の理解を助けるために、独特の言葉を使っていました。「ヘルンさん言葉」なら、丁々発止というよりも、ゆっくりとかみしめるようなコミュニケーションになると想像できた。僕は会話劇が好きですし、おかしみがあって、愛おしさもあるような会話が描けると考えたんです。
オーディションを経て、トキ役が高石あかりさんに、ヘブン役がトミー・バストウさんに決まった時、お芝居でありながら2人の存在にリアリティを感じました。画面の向こうは本当に明治初期の松江のよう。実在した人をドラマで描くのは初めてでしたが、ドラマを見ていてこんなにも愛おしく感じられることがあるのだと驚きました。