(イラスト:太田裕子)
老後のお金や健康の不安、世間から取り残されたような孤独感……。年齢を重ねると、何かと負の感情にとらわれやすくなります。仏教の教えをもとに、今を楽しめる心を取り戻す練習を始めましょう(構成:山田真理)

できないことを数えても意味がない

人生のなかで、老いは誰もが避けて通ることのできない道です。若い頃より体力が衰え、できないことが増えた。家族や友人が鬼籍に入ってしまった。仕事や生活、家族、自分の姿も、昔と変わっていく――。

そうした変化に対して、人は「自分も老いたものだ」と考えます。そんなときは負の感情を抱き、心が乱れがちです。

なかでも人々を苦しめるのが、過剰に求めてしまう貪欲、不満や不快を感じる怒り、余計なことを考えてしまう妄想。仏教の世界では、不安や寂しさといった負の感情の背景には、大切なものを失うことへの恐怖、実際に失ったときの喪失感と、それに対する怒りがあると考えます。

また、人間は妄想が大好きな生き物です。「病気になったらどうしよう」など、まだ起きてもいないことに対する過剰な妄想に振り回されるのも、心身にはよくありません。

私が今回お伝えしたいのは、肉体は年齢を重ねるけれど、心に年齢は存在しない、つまりいつまでも若さを保てるということ。これが、仏教が教えてくれる真実です。なぜならば、心は変わり続けるものだから。

生きていれば、気持ちが軽いときも重たいときもありますし、穏やかなときも、イライラ・モヤモヤするときもありますよね。こうした変化は、年を重ねることとは関係なく、その時々の心の状態にすぎないのです。

では、老いをネガティブにとらえてしまう自分を手放すことができたら、どう変わるか想像してみてください。たとえば、「これが今の自分の姿。だから今の自分にできることをやればいい」と考える。昔と比べればできないこと、失ったものはあるような気はする。

でも、今できないことを数えても意味がない。そう思えれば、日々変わりゆく新鮮な心だけが残って、「楽しい」という感情が入ってくる余裕も生まれるでしょう。