2026年1月に発表された日本映画製作者連盟(映連)のデータによると、2025年の年間興行収入は2744億5200万円で過去最高となりました。「2020年代の現在、日本映画(邦画)はかつてない盛況を迎えている」と語るのは、映画史研究者・渡邉大輔さんです。そこで今回は、渡邉さんの著書『『君の名は。』は日本映画に何をもたらしたのか 庵野秀明・岩井俊二・新海誠から読み解く現代日本映画史』より一部を抜粋し、お届けします。
「90年代」から現代映画を考える
90年代とは、2010年代半ばに「国民作家」となった新海誠と、その「ポスト新海」の日本映画を支えた庵野秀明と岩井俊二にとって、そのキャリアの重要な出発点となった時期でもあった。
この時代は、いうまでもなく、3人のうち、庵野と岩井にとっては本格的な監督デビューを果たした時期であり、新海が本格的な映像制作を開始したのもまた、ギリギリこの90年代の終わりである。
ともあれ、日本映画の検討のためにわれわれがなぜこの時代に注目するのかといえば、それはもちろん、90年代がもろもろのデジタル技術の本格的な台頭を迎えた時期であったからだ。
ここでまず、注目したいのが、映画史に限らず重要な「1995(平成7)年」という年である。この年は、戦後50年という節目の年であったのをはじめ、1月17日に阪神・淡路大震災、そして3月20日に地下鉄サリン事件が発生し、一連のオウム真理教事件が一気に社会問題化することになる、現代史の転換点になった年とされることが多い。