『カフェーの帰り道』で今年1月直木賞を受賞した嶋津輝さん。小説を書き始めるまでには、紆余曲折あったそう。どのようにして自分の天職に出合ったのでしょうか(構成:篠藤ゆり 撮影:本社・武田裕介)
小説教室で得た初めての手応え
教室に行き始めたら、すぐに先生から褒められて。家に帰って、夫に「私、勝った!」と言った記憶があります(笑)。夫の反応は「えっ? 勝ち負けじゃないんじゃない?」。
夫の言うことはもっともですが、それまでさんざん向いていないことをやっていた私にとって、「やっと自分に向いていることが見つかった!」という手応えは、すごく嬉しいものだったんです。
先生だけでなく、提出した小説の合評の授業の後に、「面白かったです」と言いに来てくれるクラスメイトもいたりして、だんだん仲の良い4、5人のグループもできて。
帰りに毎回、近くのファミレスに寄って、その日の授業についてああだこうだ話すのがすごく楽しかったです。「あぁ、ここが私の居場所だ」と思えるようになりました。まさに第二の青春でしたね。
ある時、先生を交えての飲み会の際、クラスメイトが「嶋津さん、新人賞に応募したら」と勧めてくれ、先生が「文學界新人賞がいいんじゃない」と。
それで授業の課題として書いた小説を推敲して応募したら、2ヵ月後くらいに、最終選考に残ったという連絡があった。私にとってはすごい成功体験で、「ひょっとしたら才能があるのかも」と思いました。