舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第19回は「3年間の付き人時代」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
怒鳴られるより沁みたこと
今の僕を形作ってくれたものの一つとして忘れられないのが、西村晃さんの付き人時代の3年間です。西村さんは、僕が芝居を学んでいた舞台芸術学院の教務のフジエダ先生が学生時代から仲良くなさっていた方で、学校にも講師として来てくださっていました。
その時、西村さんが付き人を探しているというのでフジエダ先生が推薦してくれて、2年生の夏休みに1ヵ月付いたんです。ほら、僕、無遅刻無欠席で真面目に一途に芝居の勉強をしていたから、「市村くんがいい」となったんだね。
その後も、西村さんの舞台を観に行ったりして交流が深まって、舞芸を卒業する時にまだ行き先を決めていなかった僕に、「また手伝ってほしい」と声をかけてくださって。そうこうするうちに、「面倒みるからしばらく俺のところにいないか」「お願いします」と、正式に付き人になることにしたの。
付き人の仕事はいろいろあります。楽屋の掃除。化粧前を整える。「お茶」と言われたら出す。稽古場では台詞が出ない時に教えるプロンプターをやり、映画の撮影に行く際には先生が運転する車の助手席で台詞の相手役もしました。