ムール貝――疲れ知らずに殻を閉じ、ヒモを引っ張り数ヶ月
4月8日は「貝の日」。大変ローカルな話ですが、愛知県・渥美半島の「貝づくし渥美実行委員会」の提案。渥美半島の貝類がこの季節に旬を迎えることと、「貝」という漢字を崩して上の目を横に倒すと「四」と「八」になることからこの日にしたとのこと(大分苦しい)。僕も伊良湖岬を訪ねた時、渥美半島名物の大あさり(ウチムラサキ)を食べたことがある。
ムール貝についてお話ししましょう。この貝はフランス料理やイタリア料理で出てきます。コンビニでパック入りのものも売っていますね。
ムール貝はアサリやハマグリと同じ二枚貝の仲間で、2枚の殻で体をすっぽりと包んでいます。動物学上の名前(和名)はムラサキイガイ(紫貽貝)。ちょっと紫がかった黒い殻で、殻の長さは5〜10センチ。もともとは地中海のもので日本にはいなかったのですが、船の底にくっついて、大正時代に運ばれてきました。今やいたるところの海岸の岩に、多数のイガイがびっしりとついて大繁栄しています。発電所の冷却水の取り入れ口や排出口を詰まらせるほど付着してやっかいがられています。
波透くや貽貝びつしり育ちをり 原田宏子
びっしりと生えたイガイの間を波が通ると、水が透明になるという句です。じつに正しい観察で、イガイはそのエラを使って海水を濾過しています。僕は大学院時代、このエラの研究をしていました。
エラは呼吸のための器官です。でも貝の場合それだけではありません。エラは水の中に漂っている小さな餌を濾し摂って食べる摂食器官でもあります。だからびっしり生えているイガイの間を波が通り抜けると、海水は濾過されて透明になります。
貝のエラは正式には櫛鰓(くしえら)と言います。髪をとく櫛ですね。エラが櫛のような形をしています。この櫛の歯で、海水の中からプランクトンなどの微小な餌になる粒子を梳き取ります。
ムラサキイガイは潮の満ち引きする潮間帯の、結構波当たりの強い岩場にいます。こういう場所は彼らにとって住み良い場所なんですね。波がどんどん餌を運んできてくれます。ここはまた敵に襲われる心配も少ない場所です。貝の最大の天敵はヒトデですが、こんな波の荒いところにヒトデは近づけません。