(画:一ノ関圭)
詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬3匹(クレイマー、チトー、ニコ)、猫3匹(メイ、テイラー、エリック)と暮らす日常を綴ります。今回は「四男あらわる」です(画:一ノ関圭)

犬猫との出会いは「縁」なのだ。『わたしのおとうさんのりゅう』で世話になった鈴木智彦さんの家で猫が仔を産み、鈴木さんのXが仔猫だらけになった。そのとき、縁かもしれないと思った。いや、猫はじゅうぶん足りてます。でも縁ならば、つかまないと。

それで先月、鈴木さんに東京で会ったとき「仔猫、もらいます。他にもらい手がいるなら、そっち優先で」と言った。

こないだ、上京の直前に「仔猫もらってください」と鈴木さんからLINEが入った。七匹のうち、顔がかわいくないのでもらい手のない仔猫がうちに来ることになった。それがジェシーだ。縁だった。

二ヵ月の仔猫は飛行機に乗れない。それで品川からのぞみで博多へ。博多でつばめに乗り換えて熊本へ。午後二時半に出て八時半に着く、ほぼ六時間の旅だった。

品川駅で、鈴木さんから仔猫入りのカゴを受け取った。新幹線に乗るまで鳴いていたが、席についてカゴにタオルをかけたとたんに静かになって、そのままずっと、名古屋をすぎても、京都をすぎても、福山をすぎても静かだった。「いい子ですよー。うんともすんとも言いません。生きてるのかしら」と鈴木さんにLINEしたら「確認してください!」と悲鳴の返信が来た。乗り換えの直前にちょっと鳴いたが、ちゅーる一本でまた静かになった。なんと手間のかからない仔猫か。