世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、50代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第65回は「不意打ちのイケメン」です。
虫の知らせ
リビングのエアコンの効き目が悪くなってきて、思うように部屋が冷えず、設定温度を26度から22度までに下げるようになってしまった。もしこのままエアコンが息絶えてしまうと、酷暑が9月まで予想される今夏、家主もエアコンの道連れになってしまう可能性がある。「独身女性中年コラムニスト、自宅で孤独死しているのが発見された」などのネットニュースの見出しで、生涯を終えたくはない。マンションの管理会社に連絡すると「使用年数が10年を超えているので、もう部品もなく修理の余地がない」と、新品に取り替えてくれることになった。
メールのやり取りでトントン拍子に話は進み、管理会社が発注した専門会社のスタッフが自宅に来てくれるという。入室は男性1名、作業時間は2時間ほど、エアコンまわりのものは片付けてくれと事前に頼まれて、取り付け日を迎えた。午後2〜4時の間に到着すると言う。
当日の私は意味もなく朝からザワザワしていた。ふだん、マンションの整備や修繕に携わる作業員の入室なら、化粧をすることなく、どスッピン&(こちらも作業着の)ジャージで迎え入れて、たいがい側で仕事をしている。まさか、こんなおばさんの部屋に隠しカメラを仕込もうとする人物もいないだろう。
ただその日に限ってはなぜかヘアメイクをして、ジャージではない普段着に着替えて、軽く香水も振っていた。簡単なランチを済ませたあとは、食器も洗った。いつもエコ意識を高くして(?)、食器洗いは一日一回と決めているのに、この日は洗って、収納スペースまで食器を戻し、床にゴミがないかチェック。軽く掃除機もかけた。自分がなぜこの行動をしているのか、まったく心が読めなかったけれど、今思うと「虫の知らせ」だったのかもしれない。
