85平米のマンションですれ違いの新婚生活
結婚当初は夫婦ともに子どもを望んでいたこともあり、夫の所有するローンの残ったマンションで暮らしながら貯金しようと踏ん張りました。しかし、現実は甘くありません。住宅ローンが毎月13万円、ボーナス時には30万円もの返済が必要で、貯金にまで手が回らないのです。
「家は広い。今まで住んだ家の中で一番広い。でも、モノが溢れていて全然広く感じないし、何より私の好きじゃないモノばかり……」
購入から20年近く経ったマンションは、あちこちにガタがきているうえに、先妻の婚礼家具や、通販カタログで買ったと思しきチープな収納家具が部屋を占拠していました。当時の夫には「モノを捨てる」という習慣がなく、タンスの中は夫の服で溢れかえっています。バブルの遺産であるDCブランドのスーツまで発掘されました。
デスクの引き出しを開ければ、スタバで格好つけるために買ったというMacBook Airに、家族旅行で1度だけ使ったというデジカメやビデオカメラ。クローゼットからは、コンセントにすら繋がれていないスピーカー、アンプ、レコードプレイヤー、オープンリールデッキなど、ほぼ使った形跡のない高級家電が次々と現れます。
極めつけは、和室のローチェストでした。そこには、コードのちぎれた有線マウスが10個以上も詰まっていたのです。飼い猫がマウスのコードを噛みちぎり(まさにネズミのしっぽですね)、お釈迦になったモノを、捨てずに溜め込んでいたのでした。
「こんなモノ残してどうするつもりなの?」と、突きつけると、夫は「マウスを何個買ってもイタズラで噛んじゃうんだよ。これなんて、まだ新しいのにね」と、断線したコードを愛おしそうに眺めながら、再び引き出しに戻しました。つまり夫は、何も捨てる気がないのです。そう、ゴミすらも。
こちとら夫に添うことを決め、ごくわずかな荷物だけで嫁いできたというのに、あんまりな仕打ちです。
今思えば、結婚に対する2人の温度差があまりにもありすぎました。結婚で人生をリスタートしようと意気込んでいた私に対し、夫はこれまでの生活スタイルを変える気がさらさらなかった。夫にとっての結婚は「お嫁さんが来てくれて嬉しいなあ。ご飯を作ってくれるし、仕事が終われば出迎えてくれて、毎日おしゃべりができるぞ」くらいの、のんきな感覚だったのです。
しかし、夫の荷物に囲まれたマンションで居場所を見出せず、不機嫌に暮らす私を見かねたのか、「キッチンをリフォームしよう」とか「家具を買い替えよう」とか、いろいろと提案してくれるようになりました。ただし、残念ながらそのための先立つお金は持っていません。
価値観は正反対、結婚へのスタンスもバラバラ。すれ違いの日々が続くなかで、「私はどうして、こんな甲斐性のない男に惚れてしまったのか……」と、自分がかわいそうになり枕を濡らす夜もありました。今となっては私自身も「おい、わかってて結婚したのはお前だろ!」と突っ込みたくなるほどの被害者意識ですが、夫婦仲はどんどん険悪になっていきました。
そしてついに、私の打ちひしがれる姿に耐えかねた夫は、マンションの売却を決断したのです。