4,000匹以上のぬいぐるみと暮らす小説家・新井素子さんの日常がここに。「ぬい活」が一般化するはるか以前、「ぬい」という呼称を生み出し、社会からずっと変人扱いされてきた新井さん。「ぬいぐるみは生きている」と本気で確信し育んだ「ぬい」たちとの生活には、ただごとではない発見と幸せのヒントが詰まっていました。

雷が好きすぎる子の名前

と、いう訳で。
実は、ぬいさんの名前は、うちの場合、結構変わってしまうことがあります。それも、主に私と旦那の都合によって。(いや、変わらない方がいいに決まっているんだけれどね。)
でも、ぬいさんの名前が変わるのには、楽しいこともあって。
んー……稀には、ぬいさんの都合によって、名前が変わってしまうことも、あるんですよね。

一番判りやすい例が、〝シャー〞、かな。
この子はうさぎのぬいぐるみで、まあその、有体に言ってしまえば、ミッフィーです。だから、最初は、〝でかミッフィー〞なんて名前だったんですが(当時うちには、もうちょっと小さいミッフィーとか、ずっと小さいミッフィーとかがいたので、こういう名前になりました。そのぬいが、どんなぬいであるのか、絶対に判る名前をつける、それが我が家の名付け大原則だったので)、やがて。
ずっと一緒にこの子と暮らしていたら、判ったこと。
この子、とんでもなく……雷が、好きなんです。


この子は、旦那の部屋にいるぬいです。そして、旦那の部屋には窓があって、外で雨が降ったり何か天候の変化があると、それ、窓の側にいるぬいには丸判りで……。(そして、この頃、この子は、旦那の部屋の、窓の外がよく見える位置にいた。)
殆どのぬいさんは、天候の変化があんまり好きではありません。大雨が降ったり、雷が鳴ったりすると、怖がるのが普通のぬいさん。


外が暗くなって。雨が降り出して。雷が鳴ると、普通のぬいさんは、みんな怖がるんですが……ですが……この子は。この子だけは。
「シャー!」
って、片手をあげて叫ぶんですよ。すっごく嬉しそうに。
「シャー!」
「……って……おまえは……こんな反応をするってことは……おまえは……ひょっとして、雷が好き……なの、か?」
旦那が恐る恐るこんなことを言うと。瞬時に。
「シャー!」
見事に片手をつきあげている。ほんとに、ほんっとに、嬉しそうだ。
「……そうか。おまえは、雷が好きなんだ……よ、ね」
「シャー!」