中村軒「月見だんご」

旧暦八月十五日の中秋の名月は、別名「芋名月」。
秋の実りに感謝し、芋形の団子でお月さまをもてなします

平安時代頃に中国から伝わったとされる中秋の名月。旧暦八月十五日の満月を愛でる風習で、今の暦でいえば十月前後の満月にあたります。関東では、まん丸の団子をお月さまにお供えするようですが、関西では里芋形の少し細長い団子が定番。中秋の名月には「芋名月」の異名があり、京都でもこの芋形の団子が、菓子舗の店先に並びます。

おくどさん(竈(かまど))で炊いた小豆餡と、歯切れのよい餅で評判の中村軒でも、この季節、芋形の月見団子が登場します。米粉に砂糖を加えて甘くした「しんこ」という餅に、たっぷりの小豆の餡。こし餡とつぶ餡の両方が味わえます。

添加物は入っていませんから、日持ちはせず、一日で固くなるのも本物の証拠。まずはお月さまにお供えし、お下がりを皆でいただく。きびしい夏を乗り越えて、心静かに楽しむ秋の夜長のひとときです。