「作品によってクラシックからロックまで曲調がさまざまだったり、役によって声色を変えていくミュージカルの歌唱は、《壁》の連続です」(撮影:本社写真部)
NHK連続テレビ小説『おちょやん』で、主人公・千代を生家から追い出す継母・栗子を演じ、話題になった宮澤エマさん。デビューは宮澤喜一元総理の孫としてのバラエティ番組出演。学問を大事にする宮澤家では、「落ちこぼれ」だったと話す。現在は、演技と歌に邁進する32歳の心境は(構成=大内弓子 撮影=本社写真部)

おばあさんに見えるために

朝ドラに、初めての出演。こんなにもたくさんの方にご覧いただけるものかと、改めて驚いています。これまでミュージカルを中心とした舞台のお仕事が多く、劇場に足を運んでくださるお客様にしか観ていただけませんでしたが、今はSNSなどで全国の方からたくさんの声をちょうだいしていて。とくに、私が演じた栗子は第1週で登場したきり出てこなかったので、終盤になって再登場したことに大きな反響をいただいています。

再登場がどうなるかは、私自身も台本ができあがるまで知りませんでした。ですから、千代が最後に自分で家族を選ぶという、ドラマの大きな主題に関わるとわかったときには、全キャストとスタッフが積み重ねてきた物語に恥じない芝居が自分にできるだろうか、とプレッシャーも感じました。

第1週での登場シーンから、30年が経っているという設定。おばあさんに見えなければいけませんから、どういう声色や動きであれば違和感がないのか、最後まで試行錯誤でしたね。ただ、それより大事なのは、その30年間に栗子にもさまざまなことがあったのだろうと感じていただけるお芝居をすること、そして、再会してからの千代との関係をしっかり作り上げることだと思っていました。

でなければ、千代に長らく花かごを届けていたのが栗子だとわかったとき、千代に「栗子さんも家族だ」と言ってもらえたときの感動が深いものにならないでしょうから。私としては、ひどい継母だったときから(笑)、きっと苦労が多かったのだろうと栗子のバックグラウンドを考えながら演じていましたが、終盤は視聴者の皆さんがいろいろ想像してコメントを寄せてくださって。

関西の言葉など初めて経験することも多い役をいただけて、本当に満ち足りた時間となりました。