生活保護受給者や路上生活者。在留資格を失って入国管理の施設に収容された外国人。コロナ禍でますます困窮する人たちの身に今、何が起きているのか。小説『やさしい猫』で入管行政の問題に焦点を当てた中島京子さんと、生活困窮者支援を長年続けてきた小林美穂子さんが語り合った(構成=古川美穂)
コロナ禍で開いたパンドラの箱
中島 小林さんは昨年、『コロナ禍の東京を駆ける』という本を出されました。緊急事態宣言下の東京で、困窮した方の相談に乗って当座の宿泊費や食費をお渡ししたり、生活保護の申請に付き添ったり。コロナ以降ほぼ休みなく、文字通り駆け回ってこられましたね。
小林 インターネットの相談フォームを作ったら、膨大な数の相談が寄せられたんです。ネットカフェに寝泊まりしていた若い方や、女性も多くて。東京都が17年に行った調査によれば、東京には4000人のネットカフェ生活者がいるとのことですが、これまではなかなか支援の手を届けられずにいました。それがコロナをきっかけにパンドラの箱が開いてしまったと感じています。
中島 ご本のもとになったSNS上の日記も読んでいましたが、毎日のように「今日も福祉事務所に同行してひどい対応をされた」と。今の日本でこんなことが起きているのかと、本当に驚きました。
小林 私たちもまさかネットカフェやファストフード店が一斉に閉まる日がくるとは想像していなかった。それらの場所を住まいにしていた人々から寄せられるSOSに当時10人足らずのメンバーで一人一人会いに行き、朝から晩まで生活保護の申請につなげる繰り返し。目が回るような忙しさで……。
中島 生活保護申請者を役所が窓口で追い返す、いわゆる「水際作戦」がどんなものか、本当によくわかりました。