悠久の歴史を誇る中国。始皇帝や曹操など、英雄は多く、その歴史もよく知られていますが「古代中国で、普通の人々がどんな生活を送っていたのか」と聞かれれば、なかなかイメージできないかもしれません。中国の古代史に詳しい早稲田大学文学学術院の柿沼陽平教授は「現在では常識でも漢王朝では通じないものもあり、それとは逆に、今と変わらないものもある。たとえば夫婦や嫁姑関係などはその典型」と言います。
嫁姑問題はいつの時代も深刻
漢代の女性は、現代と同じように、しばしば嫁姑関係と夫婦関係に頭を悩ませていた。まず嫁と姑は、ほんらい血がつながっていないのに、家庭内で顔をあわせるため、うまくいかなければ地獄であり、そこに逃げ道はない。
ある女性は夫にこう嘆いている。
「私は13歳で機織を覚え、14歳で裁縫を学び、15歳でハープ(箜篌〈くご〉)が弾け、16歳で『詩』『書』を暗唱できました。17歳であなたの妻となりましたが、心のなかではいつも哀しい思いをしていました。あなたはお役人となり、仕事第一で私にかまけてはくださらず、私は空虚な部屋で留守を守り、顔をあわせる機会もほとんどありませんでした。ニワトリが鳴くころから機を織り、毎晩ちっとも休まず夜なべして、三日間で五疋(ひき)の絹を織りあげても、義母さまはまだ遅いとお気に召さない*1」と。
嫁姑問題はいつの時代も深刻である。