イラスト:曽根愛
『婦人公論』2月号では全国の女性読者に、幸せを感じる理由、感じられない理由について大アンケートを実施。558人の回答を得ました。苦難を乗り越え、それでも「いまが幸せ」と人生を肯定する読者の声。長くなったセカンドライフをいかに充実したものにするか、老年学の専門家である秋山弘子さんに聞きました。(構成=丸山あかね イラスト=曽根愛)

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女性の人生は、都度、熟考を迫られる

アンケートの結果を、大変興味深く拝見しました。70代後半の私が、回答者の年齢に近いということもあるのでしょう。ひとりひとりの人生を通して語られる生の言葉は、説得力をもって胸に迫ってくるものでしたし、新たな発見もありました。

いつの時代も、幸福度を左右するのは「健康であること」「経済的な不安のないこと」、そして「人とつながっていること」。読者の皆さんが、いまの自分の幸福度を「平均77.6%」と数値化した結果を見ますと、さまざまな苦労はあるにせよ、おおむね経済的な不安は少ないのだろう、と感じたのは確かです。

いまの「幸せ度」は何%?に対する回答は…

日本における中高年女性の貧困問題は、いま非常に深刻。そうした層も含めると人生のありようはもっと多様化し、幸福度の数値も大きく変わってくる気はします。

老年学(ジェロントロジー)の研究者として感じてきた女性の後半生の生き方は、まず非常にしなやかである、ということ。そしてこのアンケートではあまり浮き彫りになっていませんが、したたかであるということも言えると思います。

一般に女性は男性に比べて自分の人生を肯定しようとする傾向にありますが、それは女性の生き方のバリエーションが豊富であることと無関係ではないでしょう。

読者世代の男性の人生の多くは、学校を卒業したら就職して、定年を迎えるまで働くという単線的なものであったと思います。それに対して女性は、結婚して専業主婦になるか、仕事を続けるかといった岐路に立たされたり、母になるか否か、子育てに専念するか否かなど、都度、立ち止まり熟考することを迫られてきたはず。

そしてどのような選択をしても、縦社会ではなく水平のつながりの中を生きる女性は、ご近所さんやママ友などの微妙な人間関係を構築しながら、人生経験を積んできたのです。

だから皆さんが人生を振り返ったとき、自分なりに懸命にやってきたと自負を抱くのは当然のこと。女性の生き方が多様で正解がないぶん、選択した人生のメリットを見つめ、これでよかったと心に折り合いをつけられたのではないでしょうか。