5月号の書は「冷静沈着」です
頭はつめたく、心はあたたかく
この5月で、87歳になります。振り返ってみると、波瀾の人生を歩んでまいりました。
1945年8月9日、10歳のとき。長崎に原子爆弾が落とされ、実家は灰燼に帰しました。多大な犠牲を払った戦争が終わり、命拾いした私。その後、悪性貧血をはじめ後遺症にも苦しみましたが、死んでたまるか、負けてたまるかと必死でした。
私の音楽への情熱は冷めることなく、15歳で勉強のために上京。しかし、実家が没落して父が病に倒れてからは、家族の生活が私の両肩にかかるようになりました。困窮を極めて、数ヵ月ほど新宿でホームレス生活を送ったことも。また同性愛者として激しいバッシングにもあいました。71年に、丸山明宏から美輪明宏に改名。仕事が軌道に乗ったと思ったら、体調を崩して舞台に立てない時期もありましたね。まぁ、浮き沈みの激しかったこと─。
誰の人生にも、マイナスの「気」に覆われている時期があると思います。今がまさにそのときという方は、溜息をついたり、涙したりなさっているはず。でも、世を恨んだりしないで、冷静に目の前の問題を分析することが大切です。感情的になると、頭に血が上って熱くなり理性が働きません。
では、「冷静沈着」を身につけるにはどうすればよいか。それは日常生活の中で、呪文のように「頭はつめたく、心はあたたかく」と唱えればいいのです。これを習慣づけて、細胞の一つひとつに流し込むようにしましょう。
困難にぶつかったとき、どうしても解決法が見つからなければ、しばらく放っておく。そして、もっとほかに考えるべきことを優先してみる。きっとなんとかなるものですよ。
●今月の書「冷静沈着」