樋口恵子賞創設発表記者会見にて。2022年6月24日、東京・千代田区で(撮影:婦人公論.jp編集部)
老~い、どん!』『老いの福袋』『老~い、どん!2 どっこい生きてる90歳』といった、ユーモラスなタイトルが書店のベストセラーリストをにぎわせている樋口恵子さん。人生100年時代と言われるいま、年を重ねて実感する「老い」の正体を解き明かし、幸福感をもって生きるための指針満載の著書が熱い支持を集めている。今年5月に卒寿を迎えたのを機に、このたび「樋口恵子賞」を創設すると発表した。

「死んだら何かに」と思っていたが

評論家として活躍し、女性たちの声を集めて政策を提言する活動を続けてきた樋口恵子さん。介護保険制度の設立に大きな役割を果たしたため、「介護保険の母」と呼ばれることも。

長年、社会保障や男女共同参画のための委員を務め、大学で教鞭をとり、NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の理事長として飛び回ってきたが、この2年はコロナ禍のため外に出る機会が減っていた。その影響もあって足腰などに年齢なりの衰えを感じていたところ、2021年に初期の乳がんが発覚。全身麻酔をともなう手術を控えたころから、あるプロジェクトが動き出した。それがこのたび発表された「樋口恵子賞」だ。

津田梅子賞など、これまで数々の表彰を受けてきた樋口さん。それらの副賞賞金を貯めておいたものがいつしかまとまった額になっていた。世の中に恩返しをするために使いたいと願い、「私が死んだとき何かに役立ててもらえたら」と周囲に語るようになったのは、4、5年前のこと。

このたび、乳がんの発見と90歳という区切りを前に、長年一緒に活動してきたNPO法人「高齢社会をよくする女性の会」のメンバーが立ち上がり、賞の創設を急ぎ準備した。

同賞は、誰もが暮らしやすい超高齢社会を作るために活躍している個人や団体へ毎年、計110万円を贈る。高齢者支援だけでなく、世代間交流や次世代育成など、超高齢社会をよりよくするための活動が対象。自薦他薦は問わない。