「号泣注意」のキャッチコピーともに、読み聞かせ動画がTikTokで300万回再生されて話題となった物語『もうじきたべられるぼく』。この夏絵本として出版され、部数を伸ばしています。作者のはせがわゆうじさんに話を聞くと、この物語は一度、ボツになった過去があるそうで――。(聞き手=編集部 イラスト=はせがわゆうじ)
《ボツ》からTikTokで300万回再生に
――『もうじきたべられるぼく』は当初、絵本の形ではなく、TikTok上で読み聞かせ動画が300万回再生され、話題になっていました。この物語はいつ、どのように生まれたのでしょうか。
この作品は10年ほど前に描きました。絵本のなかに、子牛が幸せそうなお母さんの後ろ姿を眺めている、セリフのないシーンがあるのですが、あの絵が一番初めに頭に浮かんで。「これを描きたい」と思ったのです。
「自分よりまず相手のことを思い、自分の気持ちよりも相手の幸せを最優先に考える」。そんなストーリーや映画に、僕はいつも心が動くんです。こうした価値観のようなものを核にした絵本を作りたいな、と。
もうすぐ人間に食べられてしまうことを理解している子牛が、最後に母牛に会いに行く。幸せそうなお母さんを眺めながら、「いま、自分の存在を見せることが母の迷惑になってしまう」と思い、子牛は母に声をかけることなく、そのまま去っていくという物語にしました。