少女たちはこうしてスターになっていく
かつて芝居のレッスン場で師にこんなことを言われた。
「あなたたちがスターになれるとは限りません。100人デビューして、一人か二人残ればいい方よ」
あの時、プレッシャーに襲われてどこかへ逃げたくなったことを読みながら思い出した。
大手芸能事務所「鳳プロ」のマネージャー桐絵は、博多のライブハウスで16歳のミチルを見つけて、独断で上京させる。一方「鳳プロ」では、大型オーディションでグランプリを受賞した14歳の真由をデビューさせることになっていた……。
いわゆる「スター誕生物語」の面白さは、スターの原石を見つけ出すところから始まる。持論だがスターには努力や才能だけではなれない。神の采配ともいえる運が必要だ。
水と油のようなミチルと真由の歌声が重なった時、運命は攪拌され思わぬ形に変化する。
少女たちをバックアップする桐絵は運命共同体。度々自信を失い、いがみ合う二人を叱ったり宥めたりしながらステージへと駆り立てていく。特にミチルに対する桐絵の情熱は彼女の才能への期待もあるが、真由に比べて不遇な立場にあるミチルと、「女」だからと雑用ばかり押し付けられてきた自らを重ね合わせているゆえにも感じた。
ふと、スターの必要性について考えた。新しいスターはこれまでにない価値観や輝きを持って現れ、古びた芸能界を刷新していく。歌や芝居を通じて人の心を動かす力は、時に社会現象を引き起こしたりもするだろう。
逃げ帰る場所がなかった私は妙な形でこの世界に居着いてしまったが、ミチルと真由はさまざまな事情を抱えながら、着々とスターへの道を歩んでいる。いや、道のないところを歩み、道にしていくのがスターなのだろう。
星は切磋琢磨するほどに磨かれていく。その輝きの軌跡をどこまでも追いたくなった。