『万能調味料・梅みりん(左)厚玉地(右)』撮影:邑口京一郎
『婦人公論』(2022年12月号)の料理連載「お料理歳時記」では、「本みりんで作るうちの万能調味料」を特集! 日本が誇る発酵調味料の本みりん。その風味を生かした手作り調味料を、柳澤由梨さんに習います。厚焼き卵のもとになる「厚玉地」と梅の風味を移した「梅みりん」の2種があなたの料理を本格的な味に変えることでしょう(撮影=邑口京一郎 スタイリング・構成=野澤幸代)

みりんのおいしさが味の決め手となる

和食の料理人にとって欠かせない調味料がみりんです。甘みをつけるためには砂糖も使いますが、みりんなら甘みだけでなく旨みも加わって、奥行きのある味に仕上がりますから。

たとえば厚焼き卵。年の瀬になると、おせちに入れるために私はたくさん厚焼き卵を焼くのですが、その味のベースとなるのがご紹介する「厚玉地」。主役のみりんにはもち米、米麹、米焼酎を2年ほどかけて発酵熟成させた伝統製法の本みりんを選ぶようにしています。

14%前後のアルコール分が含まれるので、リキュールとして飲んでもおいしい。この厚玉地はぶりや鶏肉の照り焼きにも使えますし、プリンやスイートポテトなどのスイーツ作りにも重宝します。

古くからある調味料、煎り酒から発想したのが、もう一方の「梅みりん」。昆布と削り節を使うので厚玉地ほど日持ちはしませんが、みりんの甘みと梅の風味で幅広い料理に使えます。魚介類と特に相性がよく、あっさりした照り焼きや煮付け、下味をつけるのに便利ですし、柑橘類の搾り汁とオイルと合わせれば、サラダのドレッシングやカルパッチョのソースにも。

どちらも丁寧な製法の本みりんから作ることで、家庭料理に驚くほどの深みが生まれますよ。

柳澤さんのアトリエは、食器も調理器具も〈見せる〉スタイル。天井際の棚には大きな鍋が並び、インテリアの一部となっている。「これからの季節は土鍋やキャセロール、豆を炊く銅鍋の出番が増えます」(撮影:邑口京一郎)