相続に関する民法(相続法)が改正され、順次施行されます。夫に先立たれた妻や、親族を介護した人に関する新しい制度など、気になるポイントについて専門家に解説してもらいました。今回は、口座凍結後の「遺留分侵害額請求」についてです。(構成=山田真理)
Q.自分の相続分が少なすぎる!

⇒「遺留分侵害額請求」で現金を請求できるように

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遺留分の不足額を請求できる

配偶者や子どもなど一定範囲の相続人には、遺産のうち“最低限受け取れる分”として「遺留分」の割合が法律で決められています。もし相続人の誰かが遺言で遺産を多く受け取り、ほかの人の取得額が遺留分に満たない場合、その不足分を多くもらった人に請求することができます。これを、遺留分侵害額請求といいます。

たとえば母親が亡くなり、評価額5000万円の自宅不動産と1000万円の預貯金が、長男と次男に遺されたとします。母親は「長年同居していた長男に自宅を、貯金は次男に」という遺言書を残しました。

しかし民法上は、長男と次男の遺留分は1500万円ずつです。次男が1000万円の相続に納得いかなければ、遺留分との差額500万円を「遺留分の侵害額を払ってくれ」と、長男に請求することができるわけです。

 

請求はすべて現金に

これまでの民法の規定では、遺留分を現物(この場合は不動産)の返還でしか求めることができませんでした。

相手方(長男)が「自分の財産から500万円払う」と言わない限りは、不動産をきょうだいの共有名義にするしかなく、自宅のリフォームや売却時には、長男はいちいち次男から了承を得る必要がありました。

2019年7月から、「遺留分の請求はすべて現金で」と方針が転換されました。もし主な財産が不動産しかない場合、相続の時どう分割すれば不公平にならないか、家族であらかじめ話し合っておくことをおすすめします。