演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続けるスターたち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が訊く。第11回は歌手で俳優のミッキー・カーチスさん。大学の軽音楽バンドに誘われたことから、ロカビリー歌手としての道が開けたと語るミッキーさん。その後もレーサー、音楽プロデューサーなど多方面で活躍してきたミッキーさんは、流れるままに、適当に生きてきたと話します――。(撮影:岡本隆史)
お袋の教えに従って
私が好きなミッキーさんの映画は2004年に公開された浜野佐知監督の『百合祭』。高齢婦人ばかりが住むアパートに、ミッキーさん扮するダンディなリップサービス男がなぜか入居してきて、吉行和子たちの胸がザワザワする。
ここで浜野さんからのメッセージを紹介すると、
〈老女の間を蝶のように舞う老プレイボーイという役をこなせる男優が居なくて。脚本を読んで、「この役は結婚詐欺師の役?」と言った有名俳優さんも居ました。そんな中、ミッキーさんは、「危ないフェミニストの役ですね」と。以来、私の中で、お洒落で格好よくてセクシーなミッキーさんは、永遠の光源氏です。〉
――いやぁ、どうも。あの映画、大変だった。全部女で、男は俺一人。不思議に興奮するんですね、向こうが。何か張り切っちゃうんだね、ネグリジェに着替えるくらい張り切っちゃう。
あの撮影のとき、俺、吉行さんにメールの送り方教えたりして、皆さんにもサービスしましたからね。これも、女性には親切に優しく尽くすものだ、というお袋の教えに従ったんだろうね。