(出典:『伝説の校長講話――渋幕・渋渋は何を大切にしているのか』より)
「共学トップ」の超進学校・「渋幕」(渋谷教育学園幕張中学高校)と「渋渋」(同渋谷中学高校)。渋幕創設からわずか十数年で千葉県でトップの進学校に躍進させた田村哲夫氏は現在、同理事長・学園長を務めるかたわら、中1から高3までの生徒に向けた「校長講話」を半世紀近く続けており、その内容は現代社会に生きる幅広い年代の視野も広げてくれる。田村氏が生徒に向けて講話を行う目的の一つが“自分について知ること“であり――。

学校教育の意味が問い直される時代に

私が人生の仕事として関わってきた日本の教育が、2022年に「学制」公布から150年の節目を迎えました。明治期から戦時中までの前半にあたる75年間の教育は、「富国強兵」を目指していました。

敗戦後は、ひたすら「富国」を目指したわけですが、学校教育の根幹は、太平洋戦争を目前にした1941年に導入され、私も学んだ国民学校の仕組みが基本的に維持されているように思います。

同盟国だったドイツの小学校「フォルクス・シューレ」にちなんで名付けられた国民学校は、国が目標を定めて、その方針を全国津々浦々の学校に徹底する仕組みです。その影響を残した学校教育は戦後、見事に成功し、日本の高度経済成長期を支えることにつながりました。

ところが1970年代~80年代、日本人に「生きがい論」がわき起こり、学校教育の意味も問い直されるようになりました。豊かにはなったけれど、本当にこれが幸福なのか、という疑問を多くの人が抱くようになったのです。今日Well-Beingや働き甲斐(Work-Engagement)が大切なテーマとして議論されていることにつながる流れと言ってよいでしょう。

そんな時期にチャンスがあり、新しい学校をつくることができました。日本の社会が新しい教育を待ちかねる雰囲気の中で誕生したのが、千葉市に創設した幕張中学高校だったと実感しています。

女子高校を共学・中高一貫化した渋谷中学高校とともに、30~40年間かけて時代に先駆けた学校教育の実現を目指してきました。その成果として、卒業生が様々な形で成果を挙げていることに喜びの気持ちで一杯です。